「家計の管理」は早期退職における肝。ライフプランシミュレーションが必須です。

早期退職する人にとっての一番の不安要素は、「生活は成り立つか?」「家計は大丈夫か?」ということでしょう。単身者であっても、家庭をもつ人であっても同じだと思います。子供がいる場合はなおさらでしょう。

この不安に対して、「何とかなりそうだ」という感覚をもてるかどうかが、早期退職できるか否かの分かれ目です。家庭をもつ人の場合は、パートナーにも「不安だけれども家計は何とかなりそう」という感覚がないと、早期退職への同意を得られないでしょう。

この「不安だけれども何とかなりそう」という感覚のうち、「不安」の方は仕方ありません。不安な気持ちを拭うことは難しいですし、むしろ不安な気持ちがある方が堅実に生活できると思います。一方で、「何とかなりそう」という感覚がないとしたら、退職後の生活は困難になるでしょう。私も、「何とかなりそう」という気持ちが「不安」な気持ちよりも強くなってから、早期退職に踏み切ることができました。

経験上、 この「何とかなりそう」という感覚は、「家計の管理がしっかりできていること」に支えられています。家計が「隅々まで見えており」「いかようにもコントロール可能」な状態であることが大切です。詳しく見ていきましょう。

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「すべて」を管理する

早期退職する際に、家計に関して管理すべきことは何かというと、「家計と資産に関わる全ての現在および将来の状況」ということになります。例えば、次のようなものです。

家計に関する管理項目の例

  • 家計
    • 毎月の収支
    • 臨時の支出(学費、住宅ローンのボーナス払い、固定資産税、旅行など)
  • 金融資産
    • 預金残高
    • 投資信託(評価額、売買履歴、分配金履歴、トータルリターン)
    • 生命保険(保険料、解約返戻金)
  • 借入
    • 住宅ローン(ローン残高、返済計画)
    • その他ローン(ローン残高、返済計画)
  • 年金
    • 公的年金の受給月額見込み
    • 確定拠出年金(評価額、売買履歴、分配金履歴、トータルリターン)

これらについて現状を把握し、将来計画を作ります。これは、ライフプランシミュレーションそのものです。そして、実績データを計画に反映しながら、将来にわたって家計と資産が危ない状態になっていないかを点検することが「管理」です。データは日々発生するので、この点検作業は毎日行うことが基本になります。

管理ツールはExcelで十分

こうした情報の管理ツールもありますが、私はExcelで管理しています。Excelに不慣れな場合は管理ツールを使うのも良いでしょうが、Excelをある程度使えるならば、ワークシートを自前でデザインして管理することをおすすめします。それにより、「かゆいところに手が届く」ような柔軟な管理ができます。

私は次のようなExcelファイルを用意して、これらの情報を管理しています。【】の中身は点検頻度です。

管理ファイルの種類と点検頻度

  • 家計簿ファイル(1年で1ファイル)【毎週末】
  • 資産管理ファイル(家計収支、現金、投資信託、ローン残高等の月次推移と将来予測、税金計算)【毎朝】
  • 投資信託の売買記録ファイル【毎週末】
  • 保有ファンドのトータルリターン推移ファイル【毎月末】
  • 株式のトレード記録ファイル【都度】
  • 公的年金の将来の受給月額の試算ファイル【年に1回】
  • 確定拠出年金ファイル(残高および取引の月次記録と将来予測)【毎月末】
  • 生命保険の契約状況の管理ファイル【年に1回】

ライフプランシミュレーションが肝

これらのファイルのうち、最も重要なのは「資産管理ファイル」です。これは、月の家計収支と資産状況を把握するためのファイルで、これまでの実績だけでなく、将来の計画も入力されたいわゆる「ライフプランシミュレーション」のファイルになります。

家計と資産に関する全ての情報(実績と計画)がこの1ファイルに集約されており、1円単位で実績を反映することで将来の計画値もそれに連動して変わります。これがあると、「何とかなりそうだ」とか「駄目そうだ」という感触が掴めます。

私の場合は、税金や健康保険料の計算式も組み込んで、家計にまつわる全ての情報を計算できるようにしています。所得税の計算は国税庁のサイトで、住民税や健康保険料の計算は市区町村のサイトで計算方法が開示されており、四則演算しかありませんので、Excelの計算式に落とし込むことが可能です。マクロは使わずとも、セルの計算式だけで十分です。

このファイルで管理する情報の網羅性と精度が高いほど、将来の家計収支と資産状況の把握の精度も上がります。これが「何とかなりそうだ」という気持ちにつながります。ちなみに、私が初期バージョンを作ったのは2007年で、それから少しずつ管理項目を追加して今に至ります。

更新頻度は【毎朝】となっていますが、私の場合は、保有ファンドの評価額や分配金を毎朝確認して、ファイルをアップデートするようにしています。

管理は早期退職する人がすべき

家庭をもつ人の場合、早期退職する自分ではなく、パートナーが家計や資産を管理していることもあるかと思います。その場合も、「退職後の家計は何とかなりそうだ」という感覚をもつためには、早期退職する人も同じ内容をシェアして、家計や資産が「隅々まで見えて」「コントロール可能」な状態になるべきです。そうしないと、私だったら不安です。

パートナーによる管理は今までどおりにして、ライフプランシミュレーションについては、早期退職する人が担うという分担もよいと思います。最初はスモール・スタートでシンプルなワークシートを作り、徐々に項目を増やしていくとよいでしょう。いずれにしても、パートナーとよく話し合って、家計管理における役割分担を決めることが大切です。

ちなみに我が家では、結婚した当初から私が家計を管理しており、退職後も続けています。

「パートナーからの定額補助」はとても助かる

共働き夫婦の場合は、家計管理の分担のほかに、家計そのものについても分担方法を決めていると思います。

共働き夫婦の家計の分担のあり方については、様々なサイトで解説されていますね。例えば、次のような方法があります。※参考:共働き夫婦の家計管理は3タイプ

共働き夫婦の家計の分担例1

  • 支出で分担
  • 金額で分担
  • 1人分で生活

また、「どちらが財布を握るか」的な考え方にもとづく次のような方法もあります。※参考:家計管理がうまい夫婦の関係が良好な理由

共働き夫婦の家計の分担例2

  • 夫にお小遣いを渡す
  • 夫が妻に生活費を渡す
  • 共通口座にお金を出し合う

我が家の方法は、このうちの「1人分で生活」の発展形で、「1人分で生活」+「パートナーからの定額補助」という方式です。具体的には、私がほとんどの支出を担いますが、妻から毎月一定額をサポートしてもらっています。

これは、結婚して私が家計を管理するようになったときからの方式で、退職後も変えていません。妻からの補助額は相談して決めていますが、「妻の手元に残る額」>「補助額」となるようにしています。

このような方法にすると、次のメリットがあります。

  • 早期退職に対するパートナーの同意を得やすい
    補助額を変えなければ、パートナーの家計負担は変わらないので、早期退職に対するパートナーの同意を得やすいです。逆に、「退職後は補助額を増やしてもらえると嬉しいなぁ~」と甘えると、嫌がられます。
  • パートナーからの定額補助があることで、収入が安定する
    退職後の収入は、毎月定額の給料を得ていたときと比べると不安定になります。その際に、パートナーから毎月定額の補助があれば、収入の安定に大きく寄与します。

最後に

いかがでしたでしょうか? ここに書いたことは我が家の例ですので、それぞれの家庭で、家計の管理の仕方と負担の仕方について、パートナーとよく話し合って決めてください。

また、パートナーの協力を得やすいように、「家事」の分担についても話し合うとよいでしょう。我が家では、料理は妻に任せていますが、それ以外の家事を全て私が引き受けるようにしました。

肝になるライフプランシミュレーションについては、「ファイナンシャル・プランナーに任せずに、自分でやる」ことが大切です。早期退職を考えるならば、それは必須です。

ライフプランシミュレーションの一例として、早期退職後の「資産の取り崩しシミュレーション」の例をこちらの記事に紹介していますので、参考にしてください。

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