分配型投資信託を利用して、運用しながら資産を「取り崩す」

我が家の家計収入においては、今のところ「長期資産運用による収入(取り崩しながら運用)」が比較的大きな割合を占めています。また、その際に利用している商品は「分配型投資信託」です。

資産を「取り崩す」というと、マイナスのイメージを持たれるかも知れませんが、資産形成を終えた後に、その資産を生活費等に補充するために「少しずつ引き出しながら使う」ということです。分配型投資信託は、まさにこのためにあります。

分配型投資信託とは何か、どのようなメリット・デメリットがあるのかを押さえておきましょう。証券会社等のサイトから、分配型投資信託について解説した記事を引用しながら説明します。

スポンサーリンク

分配金は運用資産の「取り崩し」

SMBC日興証券の用語集では、分配型投資信託を次のように説明しています。

分配型投資信託 (ぶんぱいがたとうししんたく)

分配型投資信託とは、定期的に分配金を出すことを目標として運用されるタイプの投資信託のことです。特に、毎月分配型の投資信託は、一定額の分配金がお小遣い代わりに毎月受け取れるため、一時は人気を集めました。
分配金は投資信託の運用収益の中から、通常は年1~2回の決算時に投資家に還元されるお金ですが、運用成果などによっては毎回払われるとは限らず、金額も変わる可能性があります。分配金の支払い原資は投資信託の資産ですから、その分だけ資産が減り、基準価額も下がることになります。

SMBC日興証券「初めてでもわかりやすい用語集」より引用

ここで大切なのは、「分配金の支払い原資は投資信託の資産です」と明記していることです。分配金は「利息ではない」ということです。したがって、「その分だけ資産が減り、基準価額も下がる」し、「運用成果などによっては毎回払われるとは限らず、金額も変わる」わけですね。

では、せっかくの運用資産を分配金として払い出してしまうこの商品は、一体どのような人に向いているのでしょうか?

分配金を「生活費の補完」として利用する

その疑問に答えるために、ソニー銀行「MONEY Kit」の「投資信託の分配金 知っておくべき重要なポイント」という記事を紹介しましょう。この記事では、分配金について押さえておくべきポイントを、以下の6つの視点で説明しています。

投資信託の分配金 知っておくべき重要なポイント

(1)分配金のしくみ
(2)分配金が支払われないことってある?
(3)分配金が出ると基準価額は下がるってホント?
(4)分配金を受け取るメリット・デメリット
(5)分配金が多いファンドが良いファンド?
(6)ファンド選びはトータルで考えることが重要

ソニー銀行 MONEY Kit「投資信託の分配金 知っておくべき重要なポイント

このうち、「(4)分配金を受け取るメリット・デメリット」では、メリットとデメリットを次のように説明しています。

では、分配金を受け取るメリットはどこにあるのでしょうか。たとえば毎月分配型の投資信託は、運用を継続しながら投資成果をこまめに受け取ることができるため、分配金を生活費や年金の補完として利用したいかたに適しています。

一方、分配金の支払いは運用資産の減少ですので、中長期的に資産を大きく増やしたいかたであれば、分配する回数の少ない投資信託、あまり分配金を支払わない投資信託を選ぶほうが複利の効果によってより有利に運用ができます。また、分配金(普通分配金)には源泉税が課されます。受け取った分配金を全額再投資したとしても、税金が引かれた額しか再投資できませんので、分配金額が大きな場合は再投資の運用効率が低下してしまいます。

ソニー銀行 MONEY Kit「投資信託の分配金 知っておくべき重要なポイント」より引用

メリットの部分には「分配金を生活費や年金の補完として利用したいかたに適しています」と書かれています。私は「生活費の補完として利用」しており、まさにこれに合致します。

一方、デメリットの部分には「分配金の支払いは運用資産の減少なので、複利効果はそのぶん下がる」「分配金を再投資しても、分配金から税金が引かれるので、複利効果はそのぶん下がる」という趣旨の内容が書かれています。

「資産形成」の面ではデメリットがあるが、「資産形成後に、その資産を生活費等に補充するために少しずつ引き出しながら使う」ことには向いていると言えます。

自分で定期的に売却すればいいのでは?

でも、分配型投資信託を利用せずに、コストを低く抑えたインデックスファンドなどで運用しながら、定期的に自分で少しずつ売却すればいいのではないか? という疑問が湧いてきます。「そのとおり!」です。実際、SBI証券などでは投資信託の「定期売却サービス」を提供しており、私も利用しています。

当社で保有いただいている投資信託を、申込金額と申込日の設定を行うことで、毎月決まった金額だけ売却し、現金をお受取りいただけるサービスです。

例えば、定年退職されたお客様が、積立投資で長年蓄積させてきた投資信託を、そのまま運用を継続しながら年金代わりに少しずつ売却して現金で受取るという形でご活用いただけます。「毎月コース」のほか、「奇数月コース」「偶数月コース」から選択でき、ご希望により年2回まで「ボーナス月コース」の設定も別途可能です。

引用元:投資信託定期売却サービス (SBI証券)

ところが実際に利用してみると、「利益が出ているし、何だかもったいないな。売却しないでもう少し資産を増やそう…」とか、「利益がマイナスになってきたぞ。今月は売却をキャンセルして資産を温存しよう…」などの気持ちになって、売却日の直前に売却設定を解除してしまうこともしばしば。

売却を利用者の裁量で行うことから、思ったように定期売却が進まないことがあるのです。私だけかも知れませんが…。その点、分配型投資信託はクールに分配金を払い出すので、便利と言えば便利です。

「資金回収リスク」が低い点において優れている

毎月分配型投資信託を運用している会社に在籍されていた近藤 駿介氏が書かれた次の記事は、毎月分配型投資信託に関するとても詳しい解説になっています。

「詭弁」によって生まれ、「誤解」によって批判を浴びる「毎月分配型投資信託」~「認知されども理解はされていない」人気商品」(2013年9月4日)

記事の中で、「投資資金の回収リスク」に言及している箇所があり、毎月分配型投資信託は「資金回収リスクが低い点において優れている」と説明しています。この点は私も実感するところです。

「資金回収リスク」という点において、銀行融資方式に近い「毎月分配型」は、それ以外の債券方式に近い投信に比較するとリスクが低いという見方も出来るのです。投資をする際には、「リターンの大きさ」に目が奪われがちですが、様々な「リスクの大きさ」にも目を向けなければ、片手落ちになってしまいます。「毎月分配型」とそれ以外では、「投資対象のリスク」は同じだが、「資金回収リスク」が異なっている、という認識を持つことも必要だと思います。ですから、「毎月分配型は長期投資に向かない」かどうかは、「リターンの大きさ」を基準にしてみる投資家か、「リスクの大きさ」を基準にしてみる投資家かによって、結論が異なって来て当然なのです。一概に「長期投資に向かない」と決め付けられるわけではありません。

引用元:「詭弁」によって生まれ、「誤解」によって批判を浴びる「毎月分配型投資信託」 ~「認知されども理解はされていない」人気商品(BLOGOS)

このことは、なぜ「資産形成をするのか?」という問いと絡んでいます。資産形成する目的は、「いつか使うため」であるはずです。使う予定もないのに、わざわざリスクをとって投資する必要はありません。

ところが、いざ使う直前になって、何らかの理由で世界経済が深刻なダメージを受け、資産が大きく目減りしてしまうかも知れません。そのことを考えると、「投資した資金をどうやって安全に回収するか?」はとても重要な観点です。分配型投資信託は、資金をコツコツと回収するので、「資金を回収できないリスク」を低く抑えているといえます。

実際、私が保有しているファンドのうち、買ってからの期間が10年近くになるファンドの中には、投資金額を分配金として全額回収ずみのものがあります。そのようなファンドでは、「評価額が全て利益」という状態になっており、安心して長期保有していられます。

最後に

いかがでしたでしょうか? 分配型投資信託の分配金の支払いは「運用資産の取り崩し」ですが、資産運用を続けながら、その資産を生活費に補充するために「少しずつ引き出しながら使う」ことに向いています。

私は2009年に初めて毎月分配型の投資信託を購入しましたが、恥ずかしながら、その当時は、「分配金は運用資産の取り崩しである」ということを十分に理解できていませんでした。その時に買ったファンドの何本かは今も保有しており、アベノミクス相場の恩恵などで良好なリターンになっています。購入時期が良かったな、と思います。

分配型投資信託にはたくさんの種類があるので、よく分からないうちは「分配金の多さ」だけを気にしがちですが、経験上、それではうまくいきません。とは言え、良いファンドを選ぶのはとても難しいことで、これだという決め手がないのも現実です。

私のファンドの選び方についてはこちらの記事で紹介していますので、参考にしてください。

スポンサーリンク