投資信託の慎重な選び方~押さえるべき7つの情報と分配金の健全性

2019年12月21日

私は長期で運用する資産の一部を少しずつ取り崩しながら、退職後の生活費に充てています。その手段として、分配型投資信託やSBI証券の「投資信託定期売却サービス」を利用しています。

膨大な数の投資信託(ファンド)の中から買うべきものを選ぶのはとても難しい作業です。特に、私のように退職後の生活費に補充するという目的の場合、どのようにしてファンドを選べばよいか?

長期にわたって良好なリターンを維持していることや、コストが安いこと、早期償還リスクが低いことなどは勿論のこと、分配型投資信託の場合は、分配余力や分配金利回りの健全性も気になります。慣れないうちは、「分配金の多さ」ばかりを気にしがちですが、経験上、それではうまくいきません。

ここでは、参考までに、私が投資信託を選ぶ際に見ている情報を紹介します。

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投資信託を選ぶ際に押さえるべき7つの基本情報

私が投資信託を選ぶ際に主に見ている情報は次の7つです。かっこ内に、その理由も簡単にメモしました。

  1. 純資産が10億円以上であること(早期償還リスクが低いものを選ぶ)
  2. 信託報酬率が低いこと(運用コストが低いものを選ぶ)
  3. 買付手数料が安いこと(買付コストが低いものを選ぶ。ノーロードならベスト)
  4. 償還までの期間が十分にあること(長期保有できるものを選ぶ。無期限ならベスト)
  5. 商品内容(リスクの内容)が複雑でないこと(通貨選択型やオプション取引を用いるものはできれば避ける)
  6. 設定来のトータルリターンがプラスであること(パフォーマンスの悪いファンドは買わない)
  7. モーニングスターの総合レーティングが良好であること(1や2はできれば避ける)

7.の「モーニングスターの総合レーティング」は、投資信託の運用成績をモーニングスターが独自に評価しているもので、SBI証券なども参照しています。★の数による5段階評価ですが、私は3つ星以上のファンドを選ぶようにしています。運用期間が3年以上のファンドが評価対象なので、レーティング付きのファンドを選べば、運用期間が3年未満のファンドは自ずと選ばれません。

実際の選定作業は、まず証券会社のサイトの「ファンド検索」を用いて目ぼしいファンドを絞り、次に直近の月次レポートや交付運用報告書などでファンドの運用状況を詳しく確認して選ぶという流れになります。上に挙げた項目は、ファンド検索の条件指定や検索結果の並べ替えにおいて利用できます。

ところで、「インデックスファンド」の多くは、ここに挙げた7条件を満たします。したがって、SBI証券でそのようなインデックスファンドを保有し、退職後に定期売却サービスを始めれば、「運用を続けながら少しずつ生活費に充てる」という目的を達成することができます。ただし、NISA預かりのファンドは定期売却サービスの対象外なので注意が必要です。

分配型投資信託では、分配金の健全性も確認

私は諸事情でSBI証券以外にも口座を持っているので、そちらでは分配型投資信託を利用しています。分配型投資信託の多くは「アクティブファンド」なので、コストはインデクスファンドよりも高いです。ならば「リターンはどうか?」というと、残念ながら、リターンの面でもインデックスファンドに負けていることが多いです。

そのようなアクティブファンドは買う価値がないとも言えますが、一方で、運用成績の優秀なアクティブファンドがあることも事実で、それらの中から分配型投資信託を選びます。また、インデックスファンドの中にも、数は少ないですが分配型投資信託はあります。

分配型投資信託を選ぶ際は、先の7つの基本情報に加えて、分配金の健全性を表す次の2つの情報も確認します。

  1. 分配余力が大きいこと(分配金の減額リスクが低いファンドを選ぶ)
  2. 分配金利回りが高すぎないこと(無理な分配をしているファンドを避ける)

具体的には、7つの基本情報の6点目の「トータルリターン」と合わせて、長期のトータルリターンの大きいファンドの中から、分配余力が十分にあり、分配金利回りが高すぎないものを選びます。

「トータルリターン」「分配余力」「分配金利回り」について、モーニングスターの「投資信託用語集」を参照しながらもう少し説明を加えます。

トータルリターンが「大きい」ファンド

トータルリターンとは、「ファンドが対象期間にどれだけ値上がり(値下がり)したか」を示す数値です。証券会社のサイトでも、モーニングスターのサイトでも確認することができます。なお、モーニングスターでは、分配金(税引前)を再投資したものと仮定して計算しており、複数年のリターンは年率表示しているので利用しやすいです。

私はなるべく長期のトータルリターンを参考にします。モーニングスターでは、最長で10年間のリターンを示しています。また、ファンドの月次レポートなどを見ると、設定来のリターンなど、より長期のリターンも確認できます。

「トータルリターンが何%くらいなら良いか?」ということを知りたくなりますが、一概には言えません。なぜなら、ファンドの分類(資産クラス)によってリターンの水準が違うからです。そこで、私はモーニングスターの「ファンドランキング – リターン」を参考にしています。このページでは、分類ごとにリターンの大きな上位20のファンドをランキングして毎月更新しており、参考になります。

実際に見てみると、上位20本の多くはアクティブファンドですが、インデックスファンドがランクインしていることもあります。その場合、インデックスファンドよりも下位のアクティブファンドについては、目標とする運用成績を達成できていない可能性が高いです。

また、REIT型のファンドでは、比較的多くの分配型投資信託が上位20本にランクインしています。

分配余力が「大きい」ファンド

分配余力とは、「分配可能額から、直近の分配金を何ヵ月間支払うことが可能か」を示す数値で、次の式で計算されます。

 分配余力=分配可能額÷直近分配金実績値(税込)

モーニングスターの用語集では「安定的なインカムゲインが得られており、分配金とのバランスが保たれている場合には、分配余力が低くても安定的に分配金を支払い続けることが可能です。」と説明していますが、素直に「分配余力=分配金の減額までの残り月数」と見ておいて差し支えないと思います。

モーニングスターでは、毎月分配型のファンドのみ、この数値を示しています。それ以外のファンドについては、ファンドの交付運用報告書に記載されている「翌期繰越分配対象額」を分配可能額とみなすことで、分配余力を把握することができます。

分配金利回りが「高すぎない」ファンド

分配金利回りとは、「直近の基準価額でファンドを購入した場合、どの程度の利回りが得られるか」を示す数値で、次の式で計算されます。

 分配金利回り=過去1年間の分配金実績値(税込)÷直近の基準価額

分配金利回りが高すぎるファンドは、無理して分配金を払い続けることにより、長期的には基準価額が低下する傾向があります。目安として、「分配金利回りが6%程度以上のファンド」は、長期的には基準価額が低下する可能性が高いとみてよいでしょう。なぜなら、ファンドの長期の期待リターンはせいぜいそのくらいだからです。

その理由として、JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社が2018年12月に発表した「60資産の期待リターン長期予想 -2019年版」を紹介します。資産クラス別の今後10~15年の期待リターンを次の表のように予想しており、高々6%程度であることが分かります。※海外については「為替ヘッジなし」の数値です。

資産クラス別の今後10~15年の期待リターン (JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社「60資産の期待リターン超長期予想 -2019年版」より抜粋)
資産クラス(抜粋) 期待リターン(円ベース)(%)
日本大型株式 5.00
日本小型株式 5.50
先進国株式(除く日本) 4.00
新興国株式 6.75
日本国債 0.75
先進国国債(除く日本) 1.25
新興国国債 4.50
米国ハイ・イールド債券 3.75
米国REIT 4.50
グローバルREIT(除く米国) 4.75
0.75

従って、年間6%程度以上の分配金を支払っているファンドは、そのファンドの属する資産クラスの期待リターン以上に分配金を払い出していることになるので、「基準価額の低下」→「分配金の減額」という道をたどる可能性が高そうです。

では、分配金利回りが6%程度以上のファンドを選んではいけないかというと、必ずしもそうではないと思います。退職後などのように「資産を取り崩しながら運用することが目的」である場合は、基準価額の低下をある程度は許容してもよいわけです。また、モーニングスターの「ファンドランキング – リターン」を見ると、10年間の年率リターンが10%以上という優秀な運用成績のファンドがあることも事実です。

とは言え、一般には「分配金利回りが高いほど、基準価額の低下圧力が大きい」ということを踏まえて、もしそうしたファンドを保有している場合は、基準価額の低下や分配金の減額を心づもりしておきましょう。

なお、分配金の減額に対する向き合い方については、こちらの記事を参考にしてください。

「予想分配金提示型」も便利

ここ数年「予想分配金提示型」という分配型投資信託が出てきています。これは、「基準価額に応じて分配金額が変わる」タイプのファンドで、基準価額と分配金額の対応表が目論見書に予め示されています。

例えば「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」では、下の表で分配金額が決まります。運用実績を見ると、基準価額が10,000円を下回ると無分配になっていることから、このようなファンドは「基準価額の低下時に無理な分配をしない」「基準価額が上がったら資金回収スピードを速めることができる」「分配金額が目論見書で明示されているので透明性が高い」という点で評価できます。

予想分配金提示の例:アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型
毎計算期末の前営業日の基準価額 分配金額(1万口あたり、税引前)
11,000円未満 基準価額の水準等を勘案して決定
11,000円以上12,000円未満 200円
12,000円以上13,000円未満 300円
13,000円以上14,000円未満 400円
14,000円以上 500円

最後に

いかがでしたでしょうか? 投資信託や、その中でも分配型投資信託を選ぶ際に私が見ている情報を紹介しました。

納得のいくファンドを選ぶのはとても大変な作業です。1~2時間かけてファンド検索をして候補を絞っても、どうも納得がいかずに購入を見送ることもしょっちゅうです。そのようなときは候補リストに入れておいて、日を改めて確認するようにしています。

なお、この記事では「選びかた」を紹介しましたが、「買いかた」については触れていません。「時期を分散して少しずつ買う」などの一般の注意点に加えて、分配金を生活費の一部に充てる場合には、「分配金もなるべく分散する」ことが大切です。ファンドの運用状況によっては無分配になりますので、複数のファンドに分けて運用する方が受け取る分配金は安定します。

さて、ファンドの選定よりも重要なのがアセット・アロケーションです。我が家のアセット・アロケーションについてはこちらの記事で紹介しています。

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