優秀なアクティブファンドを探す

投資信託には、日経平均株価やNYダウなどの指標(インデックス)をベンチマークとして、ベンチマークに連動する運用を目指す「インデックスファンド」と、ベンチマークを上回る運用成績を目指す「アクティブファンド」があります。

アクティブファンドというと「高コストなのに、運用成績がインデックスファンドに負けている」というマイナス・イメージがありますが、実際はどうなのでしょうか? 優秀なアクティブファンドを探してみましょう。

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投資信託の8割強はアクティブファンド

そもそも、アクティブファンドは何本くらいあるのでしょうか? モーニングスターの「ファンド詳細検索」のページで調べてみましょう。

検索条件の「インデックスファンド区分」を “インデックスファンドを除外" にして検索すると、アクティブファンドを抽出することができます。その結果、5,020件がヒットするので、アクティブファンドは5,000本強あることがわかります(2019年10月30日時点)。ものすごい数ですね。

ちなみに、「インデックスファンド区分」を “インデックスファンドのみ" にして検索すると970件がヒットするので、インデックスファンドは1,000本弱です。

つまり、投資信託の本数の内訳は、インデックスファンドが約1,000本、アクティブファンドが約5,000本ということになり、ざっくり言うと2割弱はインデックスファンド、8割強はアクティブファンドになります。

アクティブファンドの運用コストは高い

なぜインデックスファンドの本数は少ないのでしょうか? おそらく、ベンチマークとする指標(インデックス)がそれほど沢山はないのでしょう。

また、投資信託を設定する運用会社の立場からみると「他社との差別化が難しい」ことがあると思います。例えば、「TOPIXに連動する運用を目指すインデックスファンド」を例にあげると、運用成績がTOPIXに連動する以上、どの会社が運用しても似たような成績になります。独自色を打ち出せないので、本数が増えないのでしょう。

もし、運用会社によって成績に差が出るとしたら、それはファンドマネージャーの手腕の差ではなく、単に運用コスト(信託報酬)の差によるものです。つまり、信託報酬の低いファンドほど良好な運用成績になります。

運用にそれほど手間がかからないので、インデックスファンドの多くでは信託報酬が1%未満という低い水準です。しかも、信託報酬が低いほど投資家から好まれるので、業界全体として信託報酬が下がる傾向にあります。

これに対し、アクティブファンドの信託報酬は高く、1%を超えるものがほとんどです。これは、ベンチマークを上回る運用成績を収めるために、相応の知恵を絞り、手間をかけて運用する必要があるからです。

アクティブファンドの多くは目標を達成できていない

では、相応の知恵を絞り、手間をかけて運用するアクティブファンドの運用成績はどうなっているでしょうか? 実は、目標とするベンチマークを設定し、それを上回る運用成績を達成しているファンドはとても少ないです。目標を未達(もしくはベンチマークを設定していない)アクティブファンドがほとんどです。

短期的にベンチマークを上回るリターンになっても、長期間運用するとベンチマークに負けていく傾向があります。理由の一つは運用コストが高いことです。リターンは不確定であるのに対し、コストは確定しているので、長く運用するほど高コストであることが重荷になります。

ベンチマークに負けるということは、そのベンチマークに連動する運用を目指すインデックスファンドに負けることを意味します。

では、アクティブファンドは保有に値しないかというと、そうとも言えません。数は少ないですが、ベンチマークを上回る運用成績をあげているアクティブファンドがあることも事実です。そうしたアクティブファンドの探し方を紹介しましょう。

優秀なアクティブファンドの探し方

モーニングスター株式会社の「ファンドランキング」を活用します。このページは、「リターン」「レーティング」「シャープレシオ」「コスト」「純資産」の5つについて、上位20のファンドをランキングし、毎月の頻度で更新しています。

ページを開くと、「リターン」が選ばれた状態になっているので、「分類」のところで、調べる対象の資産クラス(例えば「国際株式型」)を選び、「期間」のところで、最長の「10年間」を選べば、10年間のリターンが上位20のファンドが表示されます(下図)。

モーニングスター株式会社「ファンドランキング」ページ
(国際株式型についてリターン(10年)で降順にソートした上位7ファンドを抜粋)

ちなみに、「リターン」を選ぶと、自動的に「純資産10億円以上。DC(確定拠出年金)、SMA(ラップ口座)を除く。」という条件が加わります。

ここからは少し手間ですが、それぞれのファンドについて、直近の「月報」または「運用報告書」を調べて、リターンがベンチマークを上回っているかどうかを調べます(「月報」に記載されていることが多いです)。

図に示した7本のうち、「SMTAM ダウ・ジョーンズインデックスF」はインデックスファンドなので、それ以外の6本のアクティブファンドについて、直近の「月報」を調べた結果は次のようになります。

  • 米国NASDAQオープンBコース
    ベンチマーク:NASDAQ総合指数(円換算ベース)
    設定来の騰落率:ファンド(65.2%)< ベンチマーク(184.5%)
    ※設定日:2000年11月29日
  • AB・米国成長株投信Bコース(H無)
    ベンチマーク:S&P500株価指数(配当金込み、円ベース)
    設定来の騰落率:ファンド(191.2%)< ベンチマーク(198.3%)
    ※設定日:2006年5月25日
  • 野村 世界業種別投資シリーズ(半導体)
    ベンチマーク:MSCI All Country World Semiconductors & Semiconductor Equipment(税引後配当込み・円換算ベース))
    設定来の騰落率:ファンド(297.2%)< ベンチマーク(371.8%)
    ※設定日:2009年8月27日
  • 米国NASDAQオープンAコース
    ベンチマーク:NASDAQ総合指数(円ヘッジベース)
    設定来の騰落率:ファンド(34.2%)< ベンチマーク(103.1%)
    ※設定日:2000年11月29日

いかがでしょうか? ベンチマークが設定されていないか、設定されていてもベンチマークに負けていることが分かります。トップクラスの6ファンドがこの状況です。

なお、AB・米国成長株投信については、他のコース(CコースやDコース)ならばベンチマークを上回る運用成績になっていますが、運用期間が約5年と短いので、今後どうなるかは分かりません。

優秀なアクティブファンドの例

粘り強く調べていくと、「国際株式型」「国内株式型」「国内REIT型」の資産クラスには、設定来の騰落率がベンチマークを上回るアクティブファンドが幾つか見つかりますので、例を紹介しましょう。他の資産クラスについては、今のところ見当たらない状況です。

国際株式型

  • フィデリティ・日本・アジア成長株投信
    ベンチマーク:MSCI ACパシフィック・インデックス(税引前配当金込み/円ベース)
    設定来の騰落率:ファンド(98.57%)> ベンチマーク(71.04%)
    ※設定日:2006年6月29日
  • フィデリティ・アジア株・ファンド
    ベンチマーク:MSCI ACアジア(除く日本)・インデックス(税引前配当金込/円ベース)
    設定来の騰落率:ファンド(437.57%)> ベンチマーク(328.38%)
    ※設定日:1998年12月1日
  • フィデリティ・欧州中小型株・オープンB
    ベンチマーク:EMIXスモーラー・ヨーロピアン・カンパニー・インデックス(税引前配当金込/円ベース)
    設定来の騰落率:ファンド(716.36%)> ベンチマーク(559.71%)
    ※設定日:1996年5月31日

これらのファンドはいずれも十数年以上運用されている(すなわち、リーマン・ショックを経験している)ので、立派なパフォーマンスだと思います。できれば、米国のダウ・ジョーンズ工業株価平均、S&P500株価指数、NASDAQ総合株価指数のようなメジャーなインデックスを上回る運用成績のファンドを探したいところですが、見つからないですねぇ…。

国内株式型

国内株式型のファンドに関しては、ベンチマークを上回る運用成績のものが割とあります。投資先が国内企業なので、業界に対する土地勘があり、また丁寧な企業調査ができることから、目利きの精度が高いのだろうと思います。

  • 三井住友・中小型株ファンド
    ベンチマーク:⽇経ジャスダック平均株価
    設定来の騰落率:ファンド(465.5%)> ベンチマーク(155.7%)
    ※設定日:2003年9⽉30⽇

国内REIT型

国内REIT型のファンドに関しても、ベンチマークを上回る運用成績のものが割とあります。投資先が国内なので、しっかりと目利きができるのでしょう。

最後に

いかがでしたでしょうか? リターンランキングの上位にあるファンドの「月報」を一つ一つ調べていくと、設定来のリターンがベンチマークを上回るような優秀なファンドが幾つか見つかることを紹介しました。

また、実際に調べてみると、運用成績がインデックスファンドに負けているアクティブファンドがいかに多いかということも同時に分かります。

こうした現状を踏まえると、資産形成期においては「インデックスファンドによる運用が有利」と言えます。一方、「分配型投資信託を利用して、運用しながら資産を「取り崩す」」で紹介したように、私を含め、資産形成期が終わって「取り崩しながら運用」を始めた人にとって、分配型投資信託は有力なツールになりますが、そのほとんどはアクティブファンドです。

従って、運用成績のよいアクティブファンドを目利きする力が必要です。
※SBI証券ならば、「インデックスファンド+定期売却サービス」の組み合わせで、分配型投資信託と同等の効果を得ることも可能。

私がファンドを選ぶ方法は「投資信託を選ぶポイント~「7つの基本情報」+「分配金の健全性」」に書きましたが、良いファンドを選ぶのは本当に難しく、これだという決め手がありません。しかし、あれこれと試行錯誤する過程はとても大切で、それによって少しずつ目利きする力が鍛えられることは間違いありません。お宝ファンドを発掘して、大切な資産を運用したいですね。

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