国内REITは約半値に~コロナショックによる資産クラス別の下落率

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を背景に、各国の株価指数は2020年3月に歴史的な暴落を記録しました(コロナショック)。その後、4月から6月にかけて順調に回復しつつあります。
コロナショックにおける3月の下落がどれ程の大きさだったのか、また6月末にどこまで回復したのかを、資産クラス別に振り返ってみます。
半値近くまで暴落した国内REIT
コロナショックにおける資産クラス別の最大下落率と6月末の騰落率をモーニングスターのINDEXサイトの「資産クラス別リターン」を用いて調べてみました(下表)。
率は昨年末(2019年12月末)の値を基準に計算しています。また、最大下落率を記録した日を括弧内に示しました。どの資産クラスも3月20日前後に底を打っていることが分かります。
各資産クラスが参照している指数は、表の「代表的な指数」に示しました。クリックすると、各指数のチャートを見ることができます。
国内債券と先進国債券については今年のデータがアップされていないので、表に含めていません。
資産クラス | 代表的な指数(円換算なし) | 最大 下落率 |
6月末 騰落率 |
---|---|---|---|
国内株式 | TOPIX | ▼28.2% (3/16) |
▼9.4% |
先進国株式 | MSCIコクサイ(除く日本) | ▼32.2% (3/23) |
▼5.4% |
新興国株式 | 新興国株式指数(MSIS) | ▼33.3% (3/23) |
▼10.9% |
国内REIT | 東証REIT | ▼46.6% (3/19) |
▼22.3% |
先進国REIT | FTSE EPRA/NAREIT 先進国不動産(除く米国) | ▼39.6% (3/19) |
▼22.8% |
新興国債券 | 新興国債券指数(MSIS) | ▼19.2% (3/19) |
▼5.2% |
ハイイールド債券 | Barclays US Corporate High Yield Total Return Index Value Unhedged USD | ▼19.4% (3/23) |
▼3.8% |
金 | NY金先物(中心限月) | ▼3.0% (3/18) |
18.2% |
これを見ると、最大下落率は
- 金(▼3%程度)
- 債券(▼20%弱)
- 株式(▼30%前後)
- REIT(▼40~50%)
の順に大きくなっています。
REITの下落率の大きさが目立ちます。特に国内REITについてはそれまでが過熱気味だったせいか、半値近くまで下落しています。一方、「有事の金」と言われるように、金は底堅いです。
次に、4月~6月の回復状況を見てみましょう。
REITを除いて「1割減程度」まで回復
6月末の騰落率は、次のとおりです。
- 金(+18%強)
- 債券(▼5%前後)
- 株式(▼5%~10%強)
- REIT(▼20%強)
金は何とプラス18.2%まで値を伸ばしています。債券、株式、REITも順調に回復しつつありますが、REITの回復スピードが遅いです。
先進国株式、先進国REIT、金の3つを例に挙げて年初来のチャートを比較してみると、REIT(真ん中のチャート)の戻りが遅いことが分かります。
※他の資産クラスについては、表内の指数のリンクをクリックしてチャートを確認してみてください。
先進国株式指数の年初来チャート
指数は「MSCIコクサイ(除く日本)」です。3月に急落し、3月23日に底を打ち(下落率▼32.2%)、6月末に▼5.4%の下落率まで回復しています。

先進国REIT指数の年初来チャート
指数は「FTSE EPRA/NAREIT 先進国不動産(除く米国)」です。3月に急落し、3月19日に底を打ち(下落率▼39.6%)、6月末に▼22.8%の下落率まで回復しています。
回復スピードは遅く、まだ半値戻しくらいの状況です。戻りが遅いのか、戻らない(別の水準に戻る)のか、分かりません。
ウィズ・コロナにおいてリモート・ワークが標準になるとオフィス需要は低下します。そのことを織り込んだ新たな水準に回復するのかも知れません。

金の年初来チャート
指数は「NY金先物(中心限月)」です。
金は昨年から堅調な上昇相場が続いており、3月急落時の下落率は昨年末基準では▼3.0%に過ぎず、直前の高値を基準にしても▼11.9%の下落に留まり、いわゆる「押し目をつけた」ぐらいの状況です。
堅調さは続き、6月末には+18.2%まで上昇しています。

まとめ
コロナショックにおける3月の下落がどれ位の大きさだったのか、また6月末にどこまで回復したのかを、資産クラス別の代表的な指数(インデックス)を用いて振り返ってみました。
- 各資産クラスは3月に急落し、3月20日前後に底を打っている
- 最大下落率は次のとおり(2019年12月末を基準)。REITの下落率の大きさが目立つ
- 金(▼3%程度)< 債券(▼20%弱)< 株式(▼30%前後)< REIT(▼40~50%)
- 6月末の回復状況を騰落率で見ると次のとおり。REITの回復の遅さが気になる
- 金(+18%強)< 債券(▼5%前後)< 株式(▼5%~10%強)< REIT(▼20%強)
- REITについては、回復が遅いのではなく、リモート・ワークが標準になることによるオフィス需要の低下を織り込んだ新たな水準に回復するのかも知れない
長い目で見れば各指数は値を伸ばしていくでしょう。V字回復よりも穏やかな回復の方がむしろ望ましいとも言えます。成長を見守るしかありません。
なお、コロナショックにおける株価指数の値動きはかなり激しく、一日あたりの騰落幅・率の歴代の記録を塗り替える日々が続きました。こちらの記事にまとめていますので、ご参照ください。
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