ひふみプラスが年初来高値を早々と更新できた理由

人気投信の「ひふみプラス」。コロナショックで3月に基準価額を大きく下げましたが、その後順調に回復し、6月10日には早々と年初来高値を更新しました。
3月の大きな下落の直前に現金比率を高めたことが奏功したようです。
コロナショックにおけるひふみプラスの基準価額の推移
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を背景に、各国の株価指数は2020年3月に歴史的な暴落を記録しました(コロナショック)。その後、4月から6月にかけて順調に回復しつつあります。
ひふみプラスの基準価額も同じ動きをしています。国内の代表的な株価指数であるTOPIXの終値と比較しながらこの間の推移を見てみましょう。
最大下落率と足元の騰落率
ひふみプラスの基準価額もTOPIXの終値も同じ日(3月16日)に底値をつけています。年初からの下落率は、ひふみプラスが▼23.5%であるのに対し、TOPIXは▼27.2%。つまり、インデックスの方が大きく下落しました。
その後、ひふみプラスの基準価額は回復し、6月10日に年初来高値を更新。足元の7月7日には+5.0%まで伸びています。一方、TOPIX終値の足元の騰落率は▼7.4%であり、年初の水準をまだ回復していません。
資産クラス | 最大下落率 (3月16日) |
足元の騰落率 (7月7日) |
---|---|---|
ひふみプラス | ▼23.5% | +5.0% |
TOPIX終値 | ▼27.2% | ▼7.4% |
年初来チャートの比較
ひふみプラスの基準価額の年初来チャートは次のとおりです。年初を100%としてTOPIX終値と比較しています。また、両者の数値のギャップを第2軸に示しています。

チャートを見ると、ひふみプラスの基準価額の推移は1月、2月についてはTOPIXとほぼ同じですが、3月に入ったあたりからひふみプラスがTOPIXを上回り、徐々に差を広げています。
ひふみプラスの月次運用レポートに、この良好なパフォーマンスの理由が書かれていました。
2月末に現金比率を3割超に増やしていた
ひふみプラスの月次運用レポートで資産配分比率の推移を見ると、1月末に0.7%だった「現金等」の比率は2月末に31.2%に増えていることが分かります(下表)。
「東証一部」の比率が3割弱減っている(80.4%→51.8%)ので、東証一部の銘柄を中心に保有資産を売却し、現金化したようです。
翌3月末には「現金等」の比率が19.3%に下がっている(▼11.9ポイント)ので、3月の暴落時に大きく買い戻したことが分かります。「東証一部」の比率が63.3%に増えている(+11.5ポイント)ことから、東証一部の銘柄を中心に買い戻したようです。
市場別比率 | 1月末 | 2月末 | 3月末 | 4月末 | 5月末 | 6月末 |
---|---|---|---|---|---|---|
東証一部 | 80.4% | 51.8% | 63.3% | 64.1% | 66.47% | 69.19% |
東証二部 | 1.1% | 1.3% | 1.1% | 1.1% | 1.05% | 1.23% |
マザーズ | 3.3% | 2.7% | 2.5% | 3.1% | 3.59% | 3.51% |
JASDAQ | 1.3% | 1.2% | 1.2% | 1.3% | 1.37% | 1.55% |
その他海外 | 13.3% | 11.8% | 12.6% | 13.2% | 13.60% | 15.80% |
現金等 | 0.7% | 31.2% | 19.3% | 17.2% | 13.92% | 8.72% |
合計 | 100% | 100% | 100% | 100% | 100% | 100% |
3月の株価急落を予見していたことになり、見事という他ありません。アクティブファンドならではのプロアクティブ(先見的)な投資行動です。
現金比率を高めた理由について、運用責任者の藤野 英人氏は次のように説明しています。
現金比率30%、過去最大2,000億円に
3月以降、有望企業に積極投資2月は新型コロナウイルスの広がりに対して、現金比率を30%に引き上げました。現在のひふみ投信マザーファンドにおいて、金額に換算すると約2,000億円で、これは運用を開始して以来最大規模の現金となります。
<中略>
今回の新型コロナウイルスは前例のない不確実な事象であり、一般的にマーケットはそのようなものの影響を消化するのは得意ではありません。感染の拡大が読めるだけに、米国の堅調なマーケットが少なくとも短期的に崩れる可能性は濃厚であり、日本の株式市場も無傷ではいられないと予想し、現金比率を高める判断を行ないました。
<中略>
手元にある2,000億円の現金を有効に活用しながら市場と対話をしていこうと考えています。これまで投資できなかった会社もバーゲンセール状態になっています。さらに下げる恐れはありますが、手元の現金を有効に活用し、下がりすぎた有望企業に投資していこうと考えています。現金を作るため一時、売却した会社も相当下がっているので、買戻しをするのも十分に魅力的ですし、また今まで割高で投資しにくかった銘柄に買いを入れるチャンスです。
引用元:ひふみプラス 2020年2月度 月次運用レポート
運用責任者よりお客様へ
2月に現金比率を高めたことにより、3月の暴落時に基準価額の下落を抑えることができ、かつ有望企業の株式をバーゲンハンティングできたことが、3月以降のインデックスを上回るパフォーマンスに繋がったようです。
まとめ
コロナショックにおけるひふみプラスの基準価額の推移をTOPIX終値と比較してみました。
- 3月16日にどちらも最大下落率を記録しているが、TOPIXの方が下落率が大きい
- ひふみプラスは6月10日に年初来高値を更新し、足元(7月7日)では年初+5.0%まで続伸
- 一方、TOPIX終値の足元の騰落率は▼7.4%であり、年初の水準に戻っていない
- ひふみプラスは3月の暴落を予想し、2月に現金比率を3割超に高めている
- そのことが3月の下落の抑制とバーゲンハンティングに奏功し、インデックスを上回るパフォーマンスに繋がっている
暴落を予想して現金比率を高めるという行動は、一般の投資家がなかなか真似できるものではありません。ですが、ひふみプラスの2月度の月次運用レポートを読んでいたら、参考にしたかも知れません。
という訳で、個人的にはこの運用レポートは今後要チェックになりました。
※この記事は、記事内で紹介した商品を勧めることを意図したものではありません。
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