緊急時に頼りになる低金利ローン
新型コロナウイルス対策のための活動自粛を経験して、現金のありがたみを実感している人は多いと思います。各種の給付制度を今すぐにでも受けたいところですが、なんせ手続きに時間がかかる…。
代わりの策として「借り入れ」を検討する人のために、低金利のローンを幾つかご紹介します。多くは私が実際に利用したことのある(あるいは利用中の)ものです。
借り入れにはさまざまな条件のクリアが必要なので、誰でも利用できるというものではありません。また、借りた後のさまざまな管理を几帳面にできる人向けであることをご了承ください。
固定かつ低金利が魅力の「国の教育ローン」
教育ローンに関しては「国の教育ローン」が優れています。私も利用しており、「固定なのに低金利」が最大の魅力です。また、融資手続きもスピーディです。私の場合、サイトでの申し込みから融資まで20日間でした。
ローンの検索・比較・申込みサイトの「イー・ローン」の記事「教育ローンの金利とは?固定金利と変動金利の違いと相場について」によると、民間の教育ローンにおける金利の相場は、固定金利では「年約2%後半~5%」、変動金利では「年約1%後半~4%」とされています。
私は「国の教育ローン」を年1.66%という低金利で利用しています。しかも固定金利です。手続きの詳細等については、以下の記事にまとめていますので参考にしてください。
投資信託を保有しているならば低金利の「証券担保ローン」も魅力
証券担保ローンとは、保有している株式等を担保に融資を受けられるローンです。中には、野村信託銀行の「野村Webローン」や大和証券の「ダイワのネットローン」のように、投資信託を担保に融資を受けられる証券担保ローンもあり、いずれも低金利です。
投資信託を保有している人向けにはなりますが、ご紹介します。
年1.5%という低金利の「野村Webローン」
「野村Webローン」は、野村證券に預けている株式や投資信託などを担保にして、多用途で利用できる証券担保ローンです。2020年4月1日時点の金利は年1.5%という低金利です。
概要は次のとおりですが、詳しくは野村信託銀行のページをご覧ください。
- 使途:原則自由
- 但し、事業性資金や野村證券取扱の有価証券の購入資金にすることは不可
- 金利:年1.5%(2020年4月1日現在、変動金利)
- 借入額:10万円~1億円
- 返済:自由返済
- 担保対象の有価証券と担保掛目の例
- 国内株式(ETF・J-REIT 含む):50%
- 国内投資信託:60%
- 日本国債・地方債:80%
年2.8%という低金利の「ダイワのネットローン」
野村Webローンほどの低金利ではありませんが、大和証券のダイワLMSも預けている株式や投資信託などを担保にして多用途で利用できる証券担保ローンです。
ダイワLMSには、「ダイワ・コンサルティング」コース専用の「ダイワのSATローンⅡ」と、個人のお客様専用の「ダイワのネットローン」の2種類があり、このうち「ダイワのネットローン」が年2.8%(2019年1月4日現在)という低金利になっています。
概要は次のとおりですが、詳しくは大和証券のページをご覧ください。
- 使途:原則自由
- ただし、大和証券が取り扱う有価証券の購入資金等には利用できない
- 基準金利:2.8%(実質年率:2.83%~2.84%)(変動金利、2019年1月4日現在)
- 借入額:30~3,000万円(1万円単位)
- 返済:自由返済
- 担保対象の有価証券と担保掛目の例
- 国内上場株式(ETF・J-REIT 含む):50%
- 海外上場株式:40%
- 国内投資信託:60%
- 日本国債・地方債:80%
「担保不足」に最大限の注意を払うこと
証券担保ローンを利用する際に最も注意すべきことは、担保評価額がローン残高よりも少なくなる「担保割れ」です。
今回のコロナショックのような状況下では保有株式の時価や投資信託の評価額が大きく減少しますので、担保割れが発生する可能性が高いです。そして、担保割れがあるレベルまで進むと強制解約になるので、要注意です。
例えば、野村Webローンには担保不足に関する次の規則があります。
- 担保有価証券等の時価の下落により、担保評価額がご融資金の70%を下回った等の場合、野村信託銀行において担保有価証券等を売却のうえ、その代金をお借入元本および経過利息に充当いたします。なお、すべての売却代金がお借入元本および経過利息の総額に満たない場合には、不足額について直ちにご返済いただく場合があります。
具体例で考えてみましょう。例えば、評価額が400万円の投資信託を担保にして、借入上限額の240万円(400万円×60%)を借り入れたとします。
融資金の70%は168万円なので、担保評価額が168万円を下回るとこの条件に抵触します。これは、投資信託の評価額が280万円(168万円÷60%)を下回った状態に相当します。つまり、投資信託の評価額が7割を下回ると条件に抵触しますが、コロナショックのような状況下ではこれが起こり得ます。
ダイワのネットローンについても同様に、担保不足に関する規則があります。
- お借入額が担保の時価評価額の85%を上回った場合、原則、期日までにお借入額が借入上限額を下回る水準まで改善していただきます。期日までに改善されない場合は、期日の翌営業日以降、通知・催告等を行うことなく担保有価証券の処分を行い、貸付債権を回収させていただくことがあります。
- お借入額が担保の時価評価額の90%を上回った場合、通知・催告等を行うことなく、直ちに担保有価証券の処分を行い、貸付債権を回収させていただくことがあります。
同じ具体例で考えてみましょう。評価額が400万円の投資信託を担保に、借入上限額の240万円(400万円×60%)を借り入れたとします。
借入額 > 評価額×0.85
⇔ 評価額 < 借入額÷0.85(≒282.4万円)
なので、投資信託の評価額が282万円以下になると条件1に抵触します。つまり、野村Webローンと同じく、投資信託の評価額が7割を下回ると条件1に抵触します。
この時、「借入額が借入上限額を下回る水準まで改善」するには、この時の借入上限額は169万円(282万円×60%)なので、71万円(240万円-169万円)もの金額を返済しなければなりません。とても大変です。
担保不足に関するシミューレションを入念にしておくことが肝要です。「そんな事は起こらない」ことが現実に起こります。過去に実際に起きた暴落から目を背けず、避難訓練を必ずしておきましょう。
株式購入が目的ならばローンよりも「信用取引」
借り入れの目的が上場株式(ETF、J-REITを含む)の購入ならば、ローンを組んで借金するのではなく、信用取引を利用しましょう。
しかも、SBI証券、楽天証券、auカブコム証券などでは、投資信託を担保に信用取引ができますので現金は必ずしも必要ありません。ただし、NISA口座で保有している投資信託は担保にできません。
SBI証券と楽天証券では、一般信用取引(返済期限が無期限)の買方金利は年率2.8%です。つまり、先に紹介したダイワのネットローンと同じ金利で上場株式を長期保有できます。auカブコム証券では、売買手数料が無料である代わりに一般信用取引の買方金利は年率3.79%と高めです。また、返済期限も無期限ではなく10年になります。
ところで、信用取引と証券担保ローンの併用はできないことに注意しましょう。証券担保ローンを利用する場合は、信用取引口座を閉じなければなりません。
また、証券担保ローンと同様に、信用取引においても担保不足(いわゆる追証)に対する注意が必要です。追証にならないようにするのは当然のこと、もし追証になったとしても解消できる程度の現金の備えが必要です。
生命保険の「契約者貸付」も利用可能
生命保険を契約している場合は「契約者貸付」という制度を利用することも可能です。契約者貸付を利用すると、保険契約の保障はそのままで、解約返戻金の中から決まった範囲内でお金を借りることができます。
私はソニー生命を利用していますが、ソニー生命の契約者貸付は次のような概要です。
- 使途:不問
- 金利:年率3.00%~6.25%
- 契約している生命保険の契約日によって定まる
- 借入限度額:解約返戻金の9割または7割
- 生命保険の種類によって定まる
- 返済:自由返済
- ただし、保険期間内に返済すること
- 担保:不要
このうち金利に関しては、新型コロナウイルス感染症に対する特別取扱として、2020年3月19日~2020年12月31日の間は0.00%になっています。ただし、2020年3月19日~2020年9月30日の間に新規に受け付けた貸付が対象です。
これは嬉しい措置です。他の生命保険会社も同様の特例措置を講じていますので、ご自身の契約している生命保険会社のサイトを確認してみてください。
最後に
いかがでしたでしょうか? 急の現金が必要なときに低金利で借りられるローンを中心に紹介しました。まとめると次のとおりです。
- 教育ローンに関しては、固定なのに低金利、手続きがスピーディという点で「国の教育ローン」が優れている
- 投資信託を保有している場合は、投資信託を担保に借り入れができる「証券担保ローン」という選択肢がある。野村Webローンは年1.5%の低金利。ただし、コロナショックのような状況で起こり得る担保不足に対する備えが必須
- 「生命保険の契約者貸付」という選択肢もある。コロナ禍に対する特例措置として金利を0%にしている保険会社も多い
- 上場株式等の購入が目的ならば、ローンを組んで借金するのではなく、「信用取引」を利用すればよい。SBI証券や楽天証券では年利2.8%(一般信用取引)でETF等を含む上場株式を長期保有できる。ただし、追証に対する現金の備えが必須
担保不足や追証は本当に怖いです。今回のコロナショックで保有資産が一時的に3割減ったという人は比較的多いのではないかと想像しますが、「まさか」は現実に起こります。ローンや信用取引を利用する際は、担保不足や追証に対する備えを几帳面に行うようにしてください。
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