リスク・リターン分析を利用して優秀なファンドを選好する

ファンドを選ぶ際には、どうしてもリターンの大きなファンドに目を奪われがちですが、そのリターンを得るためにどのくらいのリスクを取る必要があるか?を把握しておくことが大切です。そのためにリスク・リターン分析を活用しましょう。

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リスク・リターン分析とは

リスク・リターン分析の例として、モーニングスターのサイトから「ひふみプラス」のグラフを紹介します。ひふみプラスのページの「レーティング&リスク」タブに掲載されているので、誰でも見ることができます。

リスク・リターン分析の例:ひふみプラス
(評価基準日:2019年11月30日)

このグラフは、リスクを横軸、リターンを縦軸にして、8つの資産クラスの平均値(①~⑧の丸)と、当該ファンドの値()をプロットしています。リスクは「過去5年間の標準偏差」、リターンは「過去5年間のトータルリターン」を表します。

標準偏差はファンドの基準価額の変動を数値化したもので、値が大きいほど基準価額の変動が大きい、すなわちリスクが大きいことを表します。また、トータルリターンは分配金(税引前)を再投資したと仮定して計算したリターンです。

グラフの元になる標準偏差(5年)とトータルリターン(5年)のデータは、「スナップショット」タブで確認できます。ひふみプラスのデータは次のようになっており、赤丸で囲んだ数値を読みとると、トータルリターン(5年)に関しては、ひふみプラスは12.33%、カテゴリー(同じ資産クラスの平均値)は7.62%。標準偏差(5年)に関しては、ひふみプラスは15.05、カテゴリーは16.56になっています。※2019年11月30日の数値

これらの数値をグラフ化したものが、先のリスク・リターン分析になります。

ひふみプラスのトータルリターン(5年)と標準偏差(5年)
(評価基準日:2019年11月30日)

なお、モーニングスターの用語解説では、リスク・リターン分析を次のように簡潔に説明しています。

ファンドの評価においては、リスクとリターンのバランスが重要です。ファンドが属する資産クラスを含めた8資産と、ファンドのリスク・リターンを比較しています。

引用元:モーニングスター 金融用語辞典

この説明だけだと利用方法がよく分からないので、このグラフを私がどのように利用しているかを次に紹介しましょう。

カテゴリー平均よりも左上のゾーンに着目する

一般に、ファンドの属する資産クラスの平均と比べて、より小さいリスクでより大きなリターンを上げているファンドは優れていると言えます。「優れている」の意味は、あくまでも「そのファンドが属する資産クラスの平均よりも」ということです。

リスク・リターン分析のグラフを見ると分かるように、資産クラスが異なるとリスクやリターンの水準が大きく異なります。従って、資産クラスの異なるファンドどうしを比べても意味がありません。同じ資産クラス内のファンドどうしで比べるか、カテゴリー平均(ファンドが属する資産クラスの平均)と比べましょう。

「より小さいリスクでより大きなリターンを上げている」ファンドは、リスク・リターン分析のグラフでは「カテゴリー平均を表すよりも左上」に位置します。

ひふみプラスのリスク・リターン分析のグラフで見てみると、カテゴリー平均のを中心に上下×左右の4つのゾーンに分割したときに、左上のゾーンに含まれるファンドは「カテゴリー平均と比べて優れている」といえます(下図)。ひふみプラスは左上のゾーンに含まれていますね。

リスク・リターン分析の例:ひふみプラス
(評価基準日:2019年11月30日)

なお、「シャープレシオ」を用いても同じ確認ができます。シャープレシオは、「リターン÷リスク」で計算される数値です。従って、シャープレシオが大きいほど「より小さいリスクでより大きなリターンを上げている」と言えます。リスク・リターン分析のグラフでいうと、原点と各プロットを結ぶ直線の傾きがシャープレシオになります。

ひふみプラスのシャープレシオ(5年)は0.82なので、カテゴリー(5年)の0.47と比べて高い数値になっており、このことからも過去5年間に関しては「カテゴリー平均と比べて、より小さいリスクでより大きなリターンを上げている」と言えます。

ただし、シャープレシオを5年→3年→1年の順に見てみると、値が少しずつカテゴリー平均に近づいていることが分かります。これは、次第にパフォーマンスが落ちていることを表しますので、注意が必要です。

従って、ファンドを選ぶ際には、リスク・リターン分析のグラフを用いて「カテゴリー平均よりも左上にあるファンド」を選好し、さらに「シャープレシオの経年変化」を見て、パフォーマンスが落ちていないかを確認すると良いでしょう。

「シャープレシオの数値だけ見れば良いではないか?」という意見もありそうですが、グラフで見るほうが情報量が多く、また視覚的にも分かりやすいです。

リスク・リターン分析の例

もう少し、リスク・リターン分析の例を紹介しましょう。今度は、国際株式のカテゴリーに属する「ピクテ・グローバル・インカム株式(毎月分配)」のリスク・リターン分析(5年)です。

リスク・リターン分析の例:ピクテ・グローバル・インカム株式(毎月分配)
(評価基準日:2019年11月30日)

カテゴリー平均の左上のゾーンからはわずかに外れていますが、カテゴリー平均と比べて、リスクはとても小さいのに、ほぼ同じリターンが得られていることが分かります。また、国際株式よりは国際債券のカテゴリー平均に近いことが分かります。

  • 国際株式型のファンドの中では、随分とリスクが抑えられているな…
  • このファンドの長所は、リターンが優れていることではなく、リスクが抑えられていることなんだな…
  • このファンドの代わりに、国際債券型のファンドを検討してもよいかも…

などの見方ができますね。

このファンドには、為替ヘッジ型の「ピクテ・グローバル・インカム株式F(毎月)円」があり、”グロイン・マイルド” という愛称がついています。グロイン・マイルドのリスク・リターン分析(5年)は下図のようになっており、さらにリスクを抑えていますね。

リスク・リターン分析の例:グロイン・マイルド
(評価基準日:2019年11月30日)

なお、リターンはカテゴリー平均をわずかに上回っているので、過去5年間に関して言えば、為替ヘッジ型のグロイン・マイルドの方が良好なパフォーマンスと見ることができます。

まとめ

いかがでしたでしょうか? リスク・リターン分析について、

  • リスク・リターン分析のグラフから、「リターンの大きさと、そのためにどの程度のリスクを取る必要があるか?」を視覚的に確認できる。
  • グラフを見る際には、ファンドの属する資産クラスの平均(カテゴリー平均)と比べるのがポイント
  • カテゴリー平均の左上のゾーンに含まれるファンドはパフォーマンスが優秀
  • シャープレシオは、原点と各ファンドのプロットを結ぶ直線の傾き。シャープレシオを用いても同じ評価ができるが、グラフを見るほうが分かりやすい
  • ファンドを選ぶ際は、リスク・リターン分析のグラフを用いて「カテゴリー平均よりも左上にあるファンド」を選好し、さらに「シャープレシオの経年変化」を見て、パフォーマンスが落ちていないかを確認するとよい

などを紹介しました。ファンドの購入時には積極的にリスク・リターン分析を活用してみてください。

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